■ 世界は硬水だらけ。日本の「軟水」は実はレアキャラ
海外旅行に行って、シャンプーをした瞬間に「あれ?」と思った経験はありませんか。泡が立たない、流したあとの髪がギシギシ、ガビガビ。あれは髪が傷んだのではなく、水が違うのです。
水の硬さ(硬度)はカルシウムとマグネシウムの量で決まります。石灰岩の地層を長い時間かけて流れる水はミネラルをたっぷり溶かし込むので硬水になる。ヨーロッパ大陸やイギリス南東部、アメリカ中西部、中国北部あたりはまさにそれで、硬度300を超える水も珍しくありません。
一方、日本は花崗岩や火山岩が多く、しかも川が短くて急。水が地層に留まる時間が短いので、ミネラルを溶かし込む前に海へ出てしまう。結果、硬度50〜80程度の軟水になります。
では日本だけが特別かというと、そうでもありません。同じ条件——古い硬い岩盤と短い河川——が揃う地域は世界にもあって、ノルウェーやスウェーデンなどスカンジナビア半島、スコットランド北西部やアイルランド西部、カナダ楯状地の一部、ブラジルのアマゾン流域、それにインドネシアやフィリピンの火山島の一部などが軟水地帯として知られています。ただ、人口が集中する大都市圏の多くは硬水。世界全体で見れば、軟水で暮らせるのはかなりの少数派なんですね。
面白いのは、日本のスーパー銭湯が海外進出するときの話。あの「湯上がりのすべすべ感」は硬水では再現できないので、わざわざ軟水器を設置して、日本の水質そのものを持っていくのだそうです。売っているのはお湯ではなく、水質だった、というわけです。
■ 今日のちょっと役立つ話:美味しい水の見分け方
「美味しい水」と一言でいっても、実は好みが分かれるところです。一般的には、ミネラル(特にカルシウムとマグネシウム)のバランスが取れた水は「まろやか」に感じられ、ミネラルが少なすぎる水は「淡白」、多すぎると「重い」と感じられやすいと言われています。
料理に使うときのコツとしては、出汁を取るなら軟水。ミネラルが少ないぶん素材の味をすっと引き出してくれますし、肉や魚を柔らかくする効果もあります。逆に、深層水由来のミネラルをあえて活かすという個性的な選び方もある。同じ「水」でも、何に使うかで最適な一杯は変わってくるのです。
——というわけで、そば半のそばとつゆがおいしいのには、ちゃんと理由があります。海洋深層水を脱塩した、限りなく純水に近い水で打つ。余計なものが何も入っていないから、そば粉そのものの香りが立つ。つゆも同じ水で引くから、出汁の輪郭がぼやけない。
水を選べるというのは、実は世界的にはけっこう贅沢なことなんです。

